ocean dropped treasure
今回は『ビーチコーミング(Beach combing)』のお話。
ビーチコーミングとは、海で磨かれた海岸に流れ着く漂流物を探すこと。
目的は、主に貝殻や流木、ガラスや石など多岐にわたります。
年齢や性別を問わず楽しむことができ、季節を問わず一年中楽しむことのできるビーチアクティビティです。
ガラスなどの人工的な物でも海水にもまれていくうちに角もとれて素敵なビーチガラスに変わりますし、自然の中で生まれた漂流物はまさに海の宝物。
漂流物のめぐり逢いはまさに運。
季節や時間、気象条件など様々な理由によって、海岸に流れ着く漂流物は毎回変わるのです。
ビーチコーミングの楽しみ方
そもそものビーチコーミングのコーミングとは
『Combing=(櫛などで)とかすこと』
岸に打ち上げられた漂着物を探し、拾い集めることです。
日本でも昔は海岸に流れ着いた”寄物”を拾う”寄物文化”がありましたから、同じようなものですね。
寄物(よりもの)
浜辺に漂着する物のこと。日本の海岸には,季節のおりおり,風や潮にのって,多くの漂着物が流れ着く。とりわけしけのあった翌朝などには,種々のものが流れ着いている。こうした寄物には,流木をはじめ,破船した船の船材など。また,ある一定の時期に海岸におしよせる魚なども含まれる。かつての浦(うら)の人々にとって,こうした寄物は,建築材や燃料としての貴重な生活財であった。また海のかなたから流れ寄る寄物に対し,これを神聖視することが多かった。
※コトバンクより
ですが、ビーチコーミングの楽しみ方に決まり事はありません。
好きなように楽しむことができます。
漂流物の写真だけ撮影して元はどこから来たものか思いを馳せるもよし、コレクションとして集めるもよし。
中には拾った漂流物でアートな作品を作り上げる人も。
学校の宿題としてテーマにするのも楽しいかもしれません。
人それぞれの楽しみ方が出来るのが「ビーチコーミング」の良さでもあります。
ニュージーランドの海岸に流れ着く珍しい寄物達
ニュージーランドは日本と同じように海に囲まれた海洋国。
西はタスマン海、東には南太平洋あり、どちらも暖流である東オーストラリア海流が北から南に向かって流れています。
特にオークランド西海岸は、不思議な物から貴重な物までと色々な物が流れつくのです。
海の潮の流れに乗ってやってくる寄物。
さて一体どんなものが流れつくのでしょうか?
ウニの殻
ウニ???と思うかもしれませんが、このウニです。
ウニの殻は海の潮でキレイに洗われ、トゲも落ちて色も漂白されます。
そして最後に残るのはこの、アイスグリーン色をした殻。
無数のトゲの痕がはっきりとわかります。
そしてオマケ話ですが、通常ウニは英語で”シーエッグ”もしくは”シーウーチン”
ですが、ニュージーランドでは『キナ(KINA)』と呼ばれています。
トグロコウイカ
これもイカだと言われてもピンとこないかもしれません。
これはトグロコウイカの殻です。
このイカは体長は3㎝~4㎝の小型。
深海性のイカで生体でお目にかかることはまずありません。
また、トグロコウイカは体内にアンモナイトのような殻をもつのが特徴です。
この体内の殻は軽くて頑丈。
死後に軟体部が腐ると殻だけが海面に浮上し、海流に乗って海岸に流されてくるのです。
ちなみにこのトグロコウイカ。
英語では”スピルラ”と言いますが、別名『ラムズ・ホーン・スクイッド(Ram’s Horn Squid)』
羊の角のような形をしているため、このように呼ばれているようです。
また発光器官をもっているため『テールライトスクイッド(tail-light squid)』とも呼ばれています。
竜涎香(りゅうぜんこう)
竜涎香とはマッコウクジラの腸内に発生する結石であり香料の原料の一種ですなのが、聞きなれない名前だと思いますので、まずは竜涎香について。
竜涎香
マッコウクジラの腸内に生成されるろう状物質で動物性香料の1つ。餌であるイカの嘴 (くちばし) からつくられた病的生産物ではないかとされている。重さ 50~5000gの不透明,灰白色の塊となって海上に浮遊する。アラキジン酸,エピコレスリンなどを含むが,芳香物質が1%ぐらい含まれる塊状固形物であり,アルコールなどによる溶剤抽出法で油状主成分を利用する。そのままでは芳香は少く,他の香料との配合により初めて芳香を放つ。
※コトバンク
一見、ただの石のように見えますが、これこそ海の黄金と呼ばれる宝物。
全世界の海岸で発見されるわけでなく、主に大西洋と南アフリカ、ブラジル、マダガスカル、東インド諸島、モルディブ、中国、日本、インド、オーストラリア、ニュージーランド、そしてモルッカ諸島の海岸あたりで発見されるとのこと。
また、竜涎香は高値で取引されており、”1g当たり10ドル~20ドル”ぐらいで取引されています。
過去の世界記録では1882年にニュージーランドのダニーデンで、水夫によって2番目に大きい竜涎香が発見されています。
重さにして、なんと446kg!
金額の記録は残っていませんでしたが、計算上、少なくとも約5ミリオン~9ミリオンの代物が発見されたことになります。
とはいえ、竜涎香などは滅多にお目にかかるものではありません。
もしかしたら、こんなお宝に出会えるかもしれない、そのわくわく感もビーチコーミングの醍醐味です。
ビーチコーミングに行くにあたって
思わずついつい長い時間を過ごしてしまうビーチコーミング。
やはり怖いのは「熱中症」。
砂浜には荷差しを遮るものはほとんどありません。
帽子や水など忘れずに持参しましょう。
持参して便利な物としては、バケツや軍手などの手袋です。
タイミングとしては干潮の1時間前~2時間くらいからがベスト。
悪天候後は特にさまざまな物が流れ着きます。
海が作り出した自然のアートを探してみて下さい。
みなさまにも素敵な出会いがありますように。