New Zealand Christmas Tree Pohutukawa
11月も後半になると少しづつ咲き始めるPohutukawa(ポフツカワ)
ニュージーランドの固有の木で、クリスマスの時期を知らせるように真っ赤な花を咲かせるのため、ニュージーランドのクリスマスツリーとも呼ばれています。
夏の訪れを告げる花でもあり、ニュージーランドの夏の代名詞の一つ。
この花が咲きはじめると、ニュージーランドの人はクリスマスの訪れを感じるのです。
ポフツカワはニュージーランドの夏を鮮やかに彩どります。
1つの枝先にたくさんのつぼみがついており、ふわふわのブラシのように赤い花が一斉に咲きはじめ、花が散ると今度は真っ赤な絨毯を敷いたように木の下が赤く埋め尽くされます。
Pohutukawa(ポフツカワ)ってどんな木?
Pohutukawa(ポフツカワ)はマオリ語で「細かい水しぶきで濡れた」という意味。
赤い花の先端に雄しべがついている様子は花の先端に水滴がついたように見えるため、そのような名前がついたようです。
まずはポフツカワがどのような花なのかをご紹介しましょう。
Pohutukawa(ポフツカワ)原産:ニュージーランド(オーストラリアという説もあり)
科名:フトモモ科メトロシデロス属
分類:常緑高木(最大樹高25mぐらいまで成長)
学名:Metrosidero sexcelsa(メトロシダラス・エクセルサ)
英名:ニュージーランドクリスマスツリー
和名:ケムニンフトモモ※フトモモ科は東南アジアやニュージーランド、オーストラリアなどの熱帯・亜熱帯に多く自生している植物で、日本でも小笠原諸島にムニンフトモモとヒメフトモモという固有種が自生しています。
フトモモ科の植物の名前を具体的に挙げると、グアバやフィジョア、ユーカリなどが同じ仲間です。
By Wikipedia
ニュージーランドでのポフツカワの開花は11月~1月頃まで。
気候に左右はされますが、12月中旬から下旬ぐらいが見ごろです。
その花の蜜はとても甘く、ニュージーランド固有の鳥達やヤモリなどが蜜を求めてやってきます。
ポフツカワはもともとは北島の一部にしか自生していなかったものの、ヨーロッパからの入植者によって植林されたのをきっかけに全国的に植林され、今では南島を含む全国の至る所で目にすることができます。
木はドーム状に成長し、多くの場合は複数の幹と大きな枝が高さ以上に周りへ広がります。
その木の枝は非常に丈夫なのですが、ねじれて育つため昔は船の側面などに利用されていました。
また、ポフツカワは冷たい南洋の潮風や干ばつなどにも強く、根を周りに広げてゆくため海岸林(かいがんりん)としても適しています。
そのため崖の上の家は、庭のポフツカワを景観のために伐採してしまうと、崖崩れが起きて家がなくなるとさえ言われるほど。
ポフツカワは海岸林としてだけでなく、薬や化粧品にも使用され、マオリの伝説に登場するなど、昔からニュージーランドの生活に深い関わりを持つ文化的シンボルでもあります。
Pohutukawa(ポフツカワ)の花はアートのデザインとしても人気
鮮やかな赤とユニークな形のポフツカワは、アートのデザインとしても人気。
ニュージーランドのアーティスト達の作品にはポフツカワをモチーフにしたものも多く、いたるところで目にします。
クラフトマーケットなではポフツカワの絵画や壁掛け、バッグに小物、絵葉書など色々なものが販売されており、どれを購入しようか迷ってしまうほど。
かわいらしいデザインも多く、センスあふれる作品は、お土産としても好評です。
ニュージーランドに来る人は気が付かなくとも、必ずポフツカワのデザインを目にします。
特に旅行者の方が必ず目にするのは、オークランドカウンシルのロゴ。
空港のポスターやオークランドのガイドブック、街中の注意喚起の看板など、いたるところに使用されていますので、ニュージーランドにお越しの際は注意深く観察してみて下さい。
赤い花だけじゃないPohutukawa(ポフツカワ)
ポフツカワは交配種も多く桜のように数多くの種類があります。
同じくニュージーランド固有種である【Rata(ラタ)】と交配することも多く、素人目ではなかなか判断がつきません。
その交配種の中でも有名なのがロトルア湖周辺のポフツカワ。
通常ポフツカワは鮮やかな赤い色の花を咲かせるのですが、この一帯で成長するポフツカワの多くはピンク色の花を咲かせせることで有名です。
その他にも確認されているだけで、黄緑がかった黄色や茶色味がかった赤、オレンジレッドや白なども存在しています。
庭木としても人気があることから交配種は年々増えており、もしかするとこれからも新しい品種が増えるかもしれません。
先住民マオリの伝説や神話に登場するPohutukawa(ポフツカワ)
マオリの伝説や神話は昔から親から子へと語り継がれていくのですが、その話の中にもポフツカワは重要な役割をもって登場します。
有名な伝説の1つが【Cape Reinga(ケープ・レインガ)】のポフツカワ。
マオリ族の魂は死後、ニュージーランド最北端の岬”Cape Reinga(ケープ・レインガ)”に向かい、そこから伝説上の故郷ハワイキに旅立つといわれています。
その別世界への入口となるのがCape Reinga(ケープ・レインガ)の崖にある樹齢800年とも言われるポフツカワの木。
地中深く海まで根をおろした根に魂は入り込み、その根が魂を行くべき道へと導くのだとか。
そして魂は最後の別れを告げて祖先の地であるハワイキへ戻るのだそうです。
また、神話の中では、ポフツカワの花は若きマオリ戦士の血を表しているとも言われています。
神話の中ではマオリの戦士Tawhaki(タワキ)が天国へ行き、父の死の報復しようとするのですが、失敗に終わり天から地上に落ちてしまいます。
ポフツカワの鮮やかな深紅の花はその時の彼の血なのだそうです。
他にもポフツカワはマオリの生活にも季節を知らせる重要な役割を果たしています。
マオリの間ではポフツカワが早く花が咲いたら、その年は長く暑い夏になり豊作をもたらすと言われています。
薬効もあるPohutukawa(ポフツカワ)製品
先住民マオリは【Rongoa(ロンゴア)】と呼ばれる独自の医学があり、ポフツカワを病気の治療や健康維持のための薬として利用してきました。
ポフツカワには薬効があり、樹皮を煮出したものは下痢止に、甘い花の蜜は喉の痛みを緩和します。
樹皮にはエラグ酸が含まれているため、保湿やアンチエイジングなどの美容効果も。
現在でも薬や健康食品、化粧品としてポフツカワ成分の含まれるものが販売されています。
また、ポフツカワの種から抽出されるオイルは良い香りがするため、香水として利用されています。
ポフツカワのエッセンシャルオイルが含まれている石鹸やハンドクリームなどは、女性の喜ぶお土産としても人気です。
その他にもポフツカワは”ハチミツ”が有名です。
ポフツカワから採れた白味がかったクリーム色のハチミツは非常に純度が高く、バタースコッチのような濃厚でクリーミーな味わい。
口当たりはまろやかで優しい甘さが口の中に広がります。
ニュージーランドはマヌカハニーが有名ですが、マヌカハニーと比べると癖がなく上品な甘さが特徴です。
ニュージーランドの有名なPuhutukawa(ポフツカワ)
ポフツカワの寿命は1000年ともいわれ、ニュージーランドには樹齢何百年もの巨大なポフツカワがいくつも存在します。
ねじれた枝が地を這うようにのび、周りに枝を長く広げるポフツカワ。
実際に目にするとその大きさに圧倒されます。
ニュージーランド最大のPohutukawa(ポフツカワ)
Gisborne(ギズボーン)から北に車で2時間半ほほどのところにある”Te Araroa(テ アラロア)
そこに樹齢約600年と言われるニュージーランド最大のポフツカワ【Te Waha o Rerekohu(テ ワハ オ レレコフ)】があります。
高さが約21m、幅は約40mもあるのだとか。
1984年に、ニュージーランドに生息する巨大なポフツカワの記録が残されていましたので、他のポフツカワと比べてみましょう。
Burstall and Sale(1984)
測定値はメートル単位:トランク直径-高さ-クラウン直径
Mangonui (マンゴヌイ)3.24-18-36.5
Tiritiri Matangi(ティリティリ・マタンギ)3.20-25-52
Mayor Island(マヨール島)3.22-17.4-36.5
Te Araroa(テアラロア)6.46-20.3-40.3
Lower Hutt(ローワーハット)2.40-14.6-15 【1860年に植林】
New Plymouth(ニュープリマス)2.27-20.2-19.1 【1874年に植林】
今から50年近く前の記録ですが、ダントツに大きいことがわかります。
オークランドにも【Dove-Myer Robinson Park(ダヴマイヤー・ロビンソン・パーク)】にオークランド最大のポフツカワがあります。
1881年に植林されたもので、樹齢138年。
高さ14m直径3m15cm
【Te Waha o Rerekohu(テ ワハ オ レレコフ)】の半分ほどですが、それでも目の前にすると圧倒される大きさです。
オークランドの中心部からも、そう遠くありませんで短期旅行でニュージーランドにお越しになった方も気軽に行ける距離ですので、是非足を運んでみて下さい。
絶滅の危機にあるポフツカワ:天敵はポッサム!
塩害に強く砂浜や岸壁などでも生息することのできるポフツカワなのですが、近年、ポフツカワの数は劇的に減少し、天然記念物に指定されるほど。
海岸のポフツカワは約25年前と比べて90%近くが消滅したそうです。
その最大の原因となっているのが【Possum(ポッサム)和名:フクロギツネ】
18世紀頃にオーストラリアから持ち込まれた外来種で、現在オーストラリアではその数が少なくなり保護動物となっていますが、ニュージーランドは害獣として扱われています。
オーストラリアと異なり、天敵となる動物のいなかったニュージーランドではポッサムが大繁殖。
1980年代には5,000万~7000万匹のポッサムがいたといわれて言われています。
かわいいつぶらな瞳とは裏腹に貪欲な食欲。
ポフツカワの新芽や葉、つぼみや花を食べ樹皮を剥ぎ取り、数年の間に枯らしてしまいます。
ポッサムはポフツカワだけでなく、果物、鳥、卵、昆虫なども食べるため、ニュージーランドの森林や生態系を壊す害獣として駆除されていますが、それでも今現在 推定3,000万匹のポッサムがいるといわれており、今後も捕獲活動が続きそうです。
また、ポフツカワはフトモモ科の植物が感染する【Myrtle rust(マートルラスト):真菌の植物病】なども懸念されており、全国で保護活動が行われています。
12月のニュージーランドへお越しになる方へ
減少が騒がれているポフツカワですが、ニュージーランドで最も大きい都市であるオークランドでもあちこちで見ることができます。
オークランド中心部から東のビーチ沿いにはポフツカワが点々とと生えており、中旬ともなると赤い花を一斉に咲かせます。
湾に浮かぶ白い帆のセーリングボート、夏の太陽の日差しでキラキラと光る海。
そして見事なまでに赤いポフツカワ。
夏のニュージーランドならではの景色をみることができます。
海沿いを観光するためのバスやその他の乗り物などもでていますので、これからの時期にニュージーランドにお越しになる人は是非立ち寄ってみて下さい。
情報元:Project Crimson/The New Zealand Tree Register/Tane’s tree trust/The meaning of trees/Wikipedia/Predator free New Zealand