Auckland Lockdown Situation
25日23:59から始まったニュージーランドのロックダウン。
実際にロックダウンが行われるとどういった毎日を過ごすことになるのか気になるところ。
まずロックダウンの定義ですが
ロックダウン(英語: lockdown)
緊急時において公共の施設や道路などで、外部からの進入者に対して内部の人間の安全確保のため建物を封鎖すること。また、人々の抑留や、屋外活動を禁止して監禁することを意味する。また、緊急事態において人の移動や情報の出入りを制限すること。
今回のニュージーランドのロックダウンは最低でも4週間を予定しており、このまま感染を抑えることができると仮定した場合、約半分の期間が終了したことになります。
すでにインターネットやSNSで耳にしている人も多いとは思いますが、実際に2週間を過ごしてみた感想や気になる状況をお伝えしたいと思います。
ロックダウンの始まり
3月23日政府会見にて25日23:59よりロックダウンを行うことが発表されました。
ロックダウンの開始まで、準備期間は約2日半。
発表が終わるやいなや、多くの人がスーパーマーケットへ押しかけました。
会見では”スーパーマーケットや薬局などは変わらずオープンするし食料も供給が止まるようなことはないため問題ありません”との事でしたが、コロナウイルスがニュージーランドで確認されてから、サニタイザーやマスク、除菌アイテムが売り切れになるなどが続出。
そんなこともあり、不安に駆られた人も多かったようです。
冷凍野菜、レトルトなどの保存食、缶詰、小麦粉や米、パスタなどが一時的に棚から消えました。
この日はどこのスーパーマーケットも3倍から5倍の売り上げをあげたほど。
ロックダウンという前代未聞の出来事に、ニュージーランドに全土に緊張が走ったことは確かです。
政府発表でロックダウンについて説明はあったもの、何ができて何が出来ないのかについては、はっきりとした答えがないものも多く、まずは4週間 家にこもるために必要なものを買いに出た人が多かったのでしょう。
25日は、これから始まる4週間のために、どこのお店も人でいっぱい。
ロックダウンの間に空いているお店は限られますので、ホームセンターや園芸センター、手芸店など、趣味に関するお店にも多くの人が押し寄せました。
準備期間終え、ロックダウンを迎えた訳ですが、実際に始まってみると車に乗って買い物にも行けるし、他人と2mの距離を保ちながらであれば、外に散歩や運動にでることも出来ます。
もちろん、必要な理由のない遠出はできないなどの行動は制限されますが、思ったより快適な毎日というのが、ざっくりとした感想です。
ロックダウン開始後の街の様子
やはりどこの地域でも普段に比べると車はあまり走っていないようです。
日ごろは渋滞する交差点もスムーズに走り抜けることができます。
買い物などの必要な外出以外は許可されていないわけですから当然といえば当然なのですが、街が静かになり心なしか空気がきれいになったような気さえしてきます。
住宅地には多く人が歩いているものの、やはり人家が少ない場所や商店街などにはほとんど人影はありません。
ニュースや友人知人からの話でも、やはりどこの地域でも同じような状態なのだとか。
通常は人で混み合うオークランドの中心部でさえも、今はまばらに人が歩くだけ。
テレビで映し出される街の様子に思わずびっくりしてしまいます。
高速道路も走る車は非常に少なく、すれ違うこともほとんどありません。
そうすると自然と車のスピードがでてしまいがちになるもの。
そんな状況を読み取るかのように道路の片隅でスピードガンを構える警察官と、追いかける準備をしているパトカー。
これも高速道路内での事故を防ぐための対策の1つ。
交通事故で怪我人がでれば、救急隊員や警察、病院関係者など、多く人の感染リスクをあげることになります。
そのためスピードの取り締まりが強化されているようです。
ロックダウン中の食料の買い出し
ロックダウン中でも食料の買い出しは必要な外出として認められています。
ただ、基本的に近所を離れてはいけないとされているので、最寄りのスーパーマーケットが原則です。
通常営業時間と比べて時間が短くなったりしていますが、普通に買い物をすることは可能です。
問題はどこもお店にもできる長蛇の列。
特に朝一番でと思う人が多いらしく大手スーパーマーケットでは、数百メートルの列ができることも珍しくありません。
ニュージーランドでは普段マスクをつける習慣はほとんどないのですが、買い物の列に並ぶ人はかなりの確率でマスクをつけるようになりました。
また、お店によって手袋着用が必須であったり、手の消毒であったりと細かなルールがあり、各それぞれに独自のルールがあるようです。
お店の中は入場制限がかけられているため、一度に全員が入ることは出来ません。
大手スーパーマーケットなどは20人~30人くらい入店することが可能ですが、お店の大きさにより入店できる人数は異なります。
小さいお店などは1人のみ。
共通しているのは、「One in one out」と呼ばれる、1人が出たら1人が入るというルールで、これはすべてのお店で取り入れている対策の1つです。
お店の中は、デリや鮮肉コーナーなどは閉まっていますが、ほぼ日常の買い物ができます。
やはりサニタイザーなどの一部商品は入荷されていませんが、肉や野菜などの日常に必要な商品は問題なく購入することは可能です。
最初は品薄だったパスタや米なども販売されていますが、以前には見たこともない会社の商品が並んでいたりするのは興味深いところ。
レジにもスタッフの横に透明なプラスチックボードが設置され、レジに並ぶ際も2mの距離が開けられるように工夫されていたりと、さまざな対策がとられています。
ロックダウン中の病院や薬局
まずGPと呼ばれるかかりつけのお医者さんは、まず電話やテレビカメラで対応となっています。
Eメールでも対応も受け付けていますし、必要であれば検査の予約を入れることも可能です。
しかし、お医者さんとは直接会って話をしたいもの。
”通常通り予約は受けていますので、いつでもどうぞ”といった内容のメールが届くところをみると、予約状況はかなりガラガラなようです。
救急病院もやはり通常に比べて人は少ないですが、そのほとんどは怪我人。
自転車で転んだおばあちゃんや、DIYでハシゴから落ちたおじさんなど。
これは予想の範囲でしかありませんが、ロックダウン中ということもあり時間があるため、慣れないことに挑戦した結果な気がしなくもありません。
薬局は人が並ぶようなことはありませんが、マスクやサニタイザーを探しにくる人や、赤ちゃん用品、応急処置セット、常備薬などを買い求める人が多いようです。
以前は店頭にマスクが並ぶことすらなかったのですが、それだけ今は需要があるということ。
この先店頭にマスクが並ぶことは珍しくなくなるのかもしれません。
ロックダウン中の散歩やエクササイズ
ロックダウン中でも散歩やエクササイズは認められているということもあり、通常ではみない人の数を近所で見かけます。
仲良く手をつないで散歩する夫婦や自転車やキックスクーターに乗った子供達。
ランニングをする人や公園の芝生でのんびりと日向ぼっこをする家族など、思ったよりものどかな感じです。
近所の人が道路を挟んで会話していたりする姿には思わず、にっこりしてしまうほど。
またロックダウン中の楽しみとしてテディベアハントを楽しむ人も多く、子供連れの散歩はテディベアを探しながら歩いている人もいて、ほのぼのしてしまいます。
こういった外出の場合、マスクをしない人がほとんど。
閉鎖空間にいるわけではないし、2m以上の間隔を保っての行動なので問題ないとしてる人が多いのかもしれません。
ただ公園の遊具は閉鎖されていますし、水道なども使用できなくなっています。
ボールなどで遊ぶことも禁じられていますが、そういったことを除けば、普段よりも平和な日常が広がっています。
ロックダウンが2週間が過ぎて感じること
ロックダウンが始まり毎日がどう変わってしまうのかと不安になったものの、日常に大きな変化はでません。
必要不可欠な仕事についている家族がいない限り、家族が全員一日家にいるぐらいです。
経済的な心配はありますが、外出の制限を除けば自由に過ごすことができます。
そのため皆、趣味のことをしたり、家族との時間を楽しんだりと有意義に過ごす人も多く、SNSなどで毎日の生活を投稿する人が増えました。
ニュージーランドは感染者数が100人を超えた日にロックダウンを行うことを発表し、その2日半後にはロックダウンが開始。
ニュースでコロナウイルスが連日報道されるようになり、海外への渡航制限がかかるなど、コロナウイルスの恐怖を身近に感じ始めた頃にロックダウンが始まりました。
そのため他国のような迫りくる感染の恐怖をあまり感じていません。
マスクをつける人が増えてギスギスとした空気が流れるかと心配にもなりましたが、普段のように笑顔で挨拶もしますし、マスクをしているからといって差別をされることもありません。
ニュースでは中国人が心無い言葉を言われたという報道もありましたが、アジア人に対する差別はこれまでもあまり感じませんでした。
2月3日には、中国を出国した外国人旅行者(ニュージーランド市民と永住者及びその家族を除く。)のニュージーランド入国を拒否。
そして、ニュージーランドで最初のコロナ感染者が確認されたのは2月28日、イランからの帰国者。
その後も2人目、3人目と感染者がでましたが、アジアからの感染者はほとんどいません。
アジア人差別を感じずに済んだのは、そういったことが背景にあるのかもしれません。
連日の記者会見では感染者数の発表があり感染者数は未だに増え、ロックダウン11日目に感染者数は1,000人を超えました。
しかし【Ministry of Health(保健省)】の発表内容を確認する限りでは、感染経路はほぼ特定されており、ある程度管理ができているようです。
ニュージーランドではこれまでに46,875件(1日平均3,300人以上:4月1日~4月7日)のコロナウイルスの検査を行っていますが、ニュージーランドの人口で計算すると既に100人に1人は検査を受けている計算になります。
コロナウイルスは無症状や軽症の感染であっても拡散の要因になりますので、地域社会内の感染を防ぐためにも検査は必要と考えられているためです。
人口がニュージーランドのおよそ26倍である日本の1日当たりの検査数が2,000件を下回っていることを考えると(4月2日調べ)、ニュージーランドの感染者数はかなり正しい数値といえます。
国内では対応が遅いとの声もあがっているようですが、他国に比べて早い段階でロックダウンに踏み切り、労働者への補償やこうしたデータも揃っていることを考えると、コロナウイルス対策としては非常に良いモデルケースではないでしょうか。
ロックダウンというと、どこの国でも厳しい取り締まりや深刻さが浮き彫りにされていますが、ニュージーランドのロックダウンはその中でも緩やかなものです。
もちろん違反者にはそれなりの罰則が待っていますが、それはルールに違反すればの話。
コロナに関する日々のニュースの中にもユーモアが盛り込まれた内容や思わず笑ってしまうロックダウンの注意事項や動画の紹介など、国民の不安を軽減するような取り組みもありニュージーランドらしい前向きさを感じます。
中でも4月3日に公開されたKiwi家族による【Family Lockdown Boogie】は再生回数120万回を突破。
ニュージーランドの多くの人はコロナウイルスの早い終息を考えるなら、多少の不便はあってもロックダウンは仕方がないと受け入れており、限られた中での毎日の生活を楽しむ方法を模索しています。
4月7日には4,000件を超える検査を行いましたが、感染者数は50人と落ち着きを見せています。
4週間後の結果はどうなるかはまだわかりませんが、2週間目を迎えたニュージーランドでは日々の感染者数が徐々に減ってきていることは確かです。
【Stay home】これが一番の解決法であることは間違いないようです。
参照元:Ministry of Health/日本経済新聞/Stuff