毎日を楽しむ

アンバーグリス ~海に浮かぶ金塊~

Ambergris

ビーチで宝物探し!』でも軽くご紹介しました竜涎香(りゅうぜんこう)。

英語では”アンバーグリス”と呼ばれています。
フランス語の 『ambre gris (アンブル・グリ):灰色の琥珀』からこのように呼ばれているようです。

ビーチコーミングをより楽しむために、是非とも知っていただきたいアンバーグリス。
今回、このアンバーグリスについて、ご紹介させていただきます。

アンバーグリスとは?

アンバーグリスとは動物性の香料のことで、マッコウクジラもしくはコマッコウクジラの体内で生成される物質です。
特殊な脂肪でできた結石のようなもので、極稀に排泄されて海を漂い海岸に流れ着くのです。

排泄されて間もない龍涎香は腐った魚のような匂いなのですが、水よりも比重が軽いために長期にわたって海上を漂流している間に酸化が進み香りが熟成します。

好物であるイカなどを食した際くちばしといった消化しにくいものから腸壁を守るために分泌されたロウ状の物質が排出されたものだといわれていますが、今の所きちんとした解明はされていません。

また、全世界の海岸で発見されるわけでなく、主に大西洋と南アフリカ、ブラジル、マダガスカル、東インド諸島、モルディブ、中国、日本、インド、オーストラリア、ニュージーランド、そしてモルッカ諸島の海岸あたりで発見されるとのことです。

昔から希少な香料として珍重されているアンバーグリス。
現在も『浮かぶ金塊(Floating gold)』と呼ばれ、”1g当たり10ドル~20ドル”で取引されています。

アンバーグリスの特徴

photo by ambergris NZ

見た目は一見ただの石のため、識別は困難です。
手に取ると石に比べて非常に軽く、消火されなかったイカやタコの口が残っており、アンバーグリスから突き出ていることも。

あとは形や色、質感や匂いなどで、アンバーグリスを識別して下さい。

アンバーグリスは海に浮かぶ時間が長いほど硬化し、色が薄くなり、重量も軽くなります。
また、海水によって研磨されることによって表面を平らになり、驚くほど滑らかになることも。

そのため丸みを帯びた楕円形の形状になる傾向にありますが、いびつな形などもあるため一概には言えません。

色と質感

長い間海遊していたアンバーグリスほど、外側表面に白いコーティング(酸化)が起こります。
一般的な見た目は濃い灰色の上に粉末状の白いパッチが覆うような感じの混ざった色です。

中は褐色や灰色の場合は多いですが、漆黒、褐色から淡いまたは濃い灰色、さらにまれにオフホワイトまたはクリーム色な時もあります。

硬化したアンバーグリスは岩のように硬いか乾燥した粘土に似ており、あまり硬化していないアンバーグリスは、タールのように柔らかく、内部は湿ったペース上の粘土のような質感です。
また、数分間ほど手に持つと手の温度で温められ、ワックス状の特性を感じます。

匂い

アンバーグリスの香りは独特で、色によって異なります。
また白っぽい上質なものだと、ジャコウやムスクのようであったり、湿った森林の香りであったり。

黒っぽい質の悪いものになると、牛などの動物の糞のような香りと形容されます。
本来アンバーグリスは芳しい香りがするらしいのですが、黒っぽいものだと外側からこういった香りは感じられないそうです。

アンバーグリスの確認方法

アンバーグリスの確認で一般的なのは、ホットワイヤー法とよばれる確認の仕方です。

アンバーグリスと思われる塊に向けて約15秒間熱したワイヤーを約1センチほど差し込みます。
本物であれば、ワイヤーの熱で溶け、黒くて不透明な樹脂状の液体がワイヤーの周りに生じ、抜いたワイヤーからは芳しい香りがします

ニュージーランドで発見されたアンバーグリスの記録

ニュージーランドでは幾度となくアンバーグリスが発見されており、何年かに一度は大きな塊が発見されたとニュースになっています。

過去の記録では1882年にニュージーランドのダニーデンで446kgのアンバーグリスが、水夫によって発見されました。
これは世界で2番目に大きいアンバーグリスです。

さすがに400kgをこえるアンバーグリスがそう簡単に発見されることはありませんが、10kgを超えるアンバーグリスは時折発見されているようです。

・1928年
南島オタラ近くのビーチで男性3人組によって85kgのアンバーグリスが発見されました。
取引価格8000ドル。当時この金額としては、かなり大金。
男性3人のうち2人は自分たちの農場が購入し、もう一人は投資家として成功したそうです。

・1945年
スチュワート島で27kgのアンバーグリスが発見されました。

・2006年
ダニーデンに住む10歳の少年は、プラカウヌイで860gの竜涎香を発見し、翌日にはさ​​らに370gを発見しました。

・2011年
南ワイララパのマオリ族10人が座礁し傷ついたマッコウクジラ死骸から埋葬の際に、40kgのアンバーグリスの大きな塊を発見。
そのお金で新しいマラエを建てたとのことです。

・2014年
マンガファイの海岸で、69歳の男性によって12.5kgのアンバーグリスが発見されました。
そのアンバーグリスは、$125,000 で取引されたとのことです。

またこの男性はチャタムアイランズからナインティマイルビーチの間を何十年にもわたるビーチコーミングで約10万ドルを稼いでいます。

アンバーグリスを探すのに最適なビーチと条件

アンバーグリスNZ』によると、”ニュージーランドのどのビーチでもアンバーグリスを発見することができますが、一般的には北島の西海岸のビーチ、南ニュージーランドとスチュアート島の露出した海岸線あたり”と述べています。

通常のビーチコーミングと異なり、満潮時がねらい目。
アンバーグリスは比較的軽量で、入ってくる潮と共に満潮の跡まで押し上げられる傾向があるからです。

季節は関係なく、アンバーグリスは一年中いつでも見つけることができます。
探すのに最適な時期の1つは、悪天候や暴風雨の直後。

嵐はより多くの海洋の浮遊物を岸に運ぶので、アンバーグリスの発見する可能性が高まります。

アンバーグリスの保管

アンバーグリスは自然乾燥させるのが最も適しています。
プラスチックで覆ったり密封したりすると、上質なものでも最初に集めたときの香りが密封されていると悪影響を受ける可能性があります。
最悪の場合はカビが発生することも。

また溶ける可能性があるので、直射日光にさらさないでください。
保管としては空気循環が出来る箱や紙袋がおススメです。

アンバーグリスを求めて

ニュージーランドにはアンバーグリスに魅了され、アンバーグリスハンターとして生活する人も。
いつ出会えるとも限らないアンバーグリスを追い求めるのはロマンなのかもしれません。

興味がない人にはただの石。
その値打ちはアンバーグリスを知る人のみぞ知る。

もしかしたら打ち上げられたアンバーグリスを見ても、気づかずに見逃していたのかもしれません。
海岸沿いを散歩していて、独特の香りのする石のような物体を見つけたら、すぐさま確保しておきましょう。
ひょっとしたら、それを機に人生が変わるかも。

海に浮かぶ金塊アンバーグリス。
次に見つけるのはあなたかもしれません。

ABOUT ME
便利帳管理人
2003年にニュージーランド(NZ)に移住。 持ち前の探求心、好奇心からNZでの楽しさを追及し続ける日々。 気が付けば早15年以上NZに滞在となるが未だ旅行者気分です。 オークランドを中心に仕事を兼ねてあちこちに出没。 InstagramではNZの写真を日々Upしてますので、お暇な方はどうぞ。