New Zealand National flower:Kowhai
ニュージーランドの春の訪れを告げる【Kowhai(コーファイ)】
9月上旬ぐらいから開花し、10月の下旬ぐらいにかけてみることのできる、ニュージーランド固有の木です。
日本でいう桜のような木といえばよいかもしれません。
この季節になると、可愛らしい釣鐘の形をした黄色い花を果物の房のようにどっさりと咲かせます。
コーファイはマメ科の植物で8種類ほどありますが、すべてニュージーランド原産。
また、ニュージーランド固有の木の中で唯一の落葉樹(半落葉性)でもあります。
その花の鮮やかさから、庭木や街路樹としても人気があり、ニュージーランドの広範囲にわたり分布。
小型の種は盆栽としても販売されており、和名では”ハネミエンジュ”と呼ばれています。
コーファイは非公式ではありますがニュージーランドの国花としても広く知られ、最近では、英国ハリー王子と挙式した時に元女優のメーガン妃が使用したウェディングベールに刺繍された花の1つとしても有名です。
マオリの生活に深い関わりを持つ【Kowhai(コーファイ)】
木に咲く花の色から名付けられたのか、【Kowhai(コーファイ)】はマオリ語で”黄色”という意味。
マオリの歌や伝説にも数多く登場します。
コーファイは昔から先住民のマオリの生活に欠かせない植物でした。
春に咲くコーファイの開花に合わせて、マオリの主食であるクマラやマオリポテトの苗を植えたり、コーファイの花や樹皮を染料に使ったり。
また柔軟性があり耐久性もあるコーファイは建築材料としても優れていました。
道具や武器として加工したり、鳥を捕まえる罠など生活の中に幅広く利用されていたようです。
ただ、コーファイはすべての部分(茎、花、根、種)にシチシンという毒性のアルカロイドを含んでいます。
過剰摂取をすると激しい嘔吐や痙攣に襲われ、筋肉が収縮。昏睡し死に至ることもあり、特に種の部分は含有率が高く、人間には有害です。
しかし、その反面、薬としての作用も持ち合わせています。
『rongoā(ロンゴア)』と呼ばれる伝統的なマオリ医学では、コーファイは薬としても使われていました。
コーファイの樹皮から抽出した液体は、下剤、風邪や喉の痛みの軽減、切り傷、筋肉痛、打撲、捻挫、骨折、皮膚病などを緩和し、樹皮を灰にしたものは、白癬の治療に有効でした。
有名な話では、1925年に有名なオールブラックスの ”George Nepia(ジョージネピア)”がラグビーのプレー中に足の血管を破裂させましたが、手術ではなくコーファイの治療法を選択しています。
治療は順調で、翌週にはラグビーをプレーしていたそうです。
鳥達をも魅了する花【Kowhai(コーファイ)】
コーファイの花にはTui(ツイ)、Bellbird(ベルバード)、Kākā(カカ)などのニュージーランドの鳥達がその花の豊富な蜜を求めてこぞってやってきます。
特にツイはコーファイの花が大好物。
コーファイの花を求めて遠くからでもやってくるため、花が咲く季節はコーファイの木の上によくツイを見かけます。
蜜をつつくというより、花を丸ごと食いちぎってはモシャモシャと食べるツイ。
コーファイのようにシチシンを含む植物には陶酔状態になる効果もあるため、ツイも酔っぱらったような状態になるといわれています。
実際に間近で写真も撮りやすい事を考えると、コーファイの花を食べ過ぎてぼーっとしているのかもしれません。
木々に芽が息吹く頃に咲き始め、鮮やかな黄色い花を咲かせるコーファイ。
それは鳥達だけでなく、人間をも魅了してきました。
ニュージーランドの切手やコインのデザインにも使われ、芸術作品のモチーフとしても人気のコーファイ。
この時期は至るところで咲いているコーファイの花をみることができますので、一度足を止めてじっくりとその魅力を観察してみて下さい。